三月四日 「第三稿」
春を予感させる雨が降っている。
起きてまず、今日で四歳になる子供のためにピアノを一曲弾いて贈る。
コーヒーを淹れて、ミックスの時間だ。
ミックス第二稿をさらに推敲し、最終段階の仕上げに取り掛かる。「型」は確定した、あとは各曲の微調整を行なっていく。
ミックスは迷いと決断と推敲の繰り返しだ。
普段の作業ならスタジオでエンジニアさんと共に一日、二日で音を決めなければならないが、こうしてある程度の期間を設けられるのはありがたい。
思えばgraceやtwilightの時は一ヶ月以上、一人でミックスをしていた。
ミックスは時に迷宮に入り込むこともある。
様々なスピーカーで聞き分けることも大切だが、聴く場所で違った印象も受けてしまう。耳は長時間聴いていると感覚が麻痺してくる。選択肢があればあるほど、迷いは多くなる。
いま、こんなにも真っ直ぐに進めていけるのは、この新年からスティルライフに向き合っていた時間の恩恵だろう。
推敲する時間がとても好きなのかも知れない。
アルバム作りの醍醐味のようにも思う。
細かなところを調整し、少しずつ想像していた音が近づいてくる作業は実に面白い。
第三稿が完成。
もうほぼ、手をつけるところは無いように思える。
ここまできたところで、一度距離を置いて聴いてみよう。