三月三日   「対岸より」

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木蓮が咲いた。
太陽の光を浴び、FMラジオを聴きながらベランダに洗濯物を干す。真昼の月が浮かんでいる。
いつものカフェでコーヒーをボトルに淹れてもらう。
アナログレコードは今日も33回転に定められた速度で回転している。

先日、ミックスしたスティルライフを閉店後のHummingbird coffeeの新しいスピーカーで聴いて、修正すべき事項のメモを取った。今日はそれを頼りに二回目のミックスにトライする。
一度目のミックスで作られたざっくりした「型」を細かく、時に大胆に調整していく。それらの微調整の集合体として、やがて一つの「新たな型」が生まれる。
今回のそれには、腑に落ちる感覚があった。明らかに最初のミックスとは異なり、「こんな音にしたいんだ」という意志を感じる。音色からのメッセージ。

新たな型で全ての曲をやり直していく。
ボーナス・トラックも含めて20曲ほどをやり終えると、目も頭も痛くなる。録音とはまた別の集中力が必要だ。
ひとまず新たな旗を立てたところで、作業を終えよう。
そして、その旗を対岸から眺めてみよう。

デザイナーの鈴木さんからジャケットデザインが届く。
表紙はスティルライフ・レコーディングの日々にポラロイドカメラで、祖父の静物画を立ててピアノを撮影したものだ。
鈴木さんと何度もデザイン案を推敲して、完成した。
とても気に入っている。

少しずつ、
けど確かな一歩で、
スティルライフは完成に近づいていく。

 
suzuki takahisa