二月十六日  「肖像画」

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和歌山に来た。
今年最初のピアノ演奏。
河合悠さんにご指名を受けて、奇しくも珍しくソロピアノで彼のライブペインティングと向かい合う。 ソロピアノ演奏は本当に珍しい。
これまではpapparayrayと、本田くんのみ。
初めて行くnormという場所へ。

さらにリンクしたのは、悠さんが前日に「normオーナー坂上さんの肖像画を描きたい」と言い出したこと。
しかも花を持ってもらうらしい。
僕はスティルライフを作るにあたり、一枚の静物画をテーゼとしていた。亡き祖父の描いた静物画だ。
何年か前に、幼少の頃に通った母のピアノレッスン室の屋根裏部屋から見つけ出し、部屋に飾っていたのだ。
それは花瓶に活けられた花の静物画だ。
坂上さんは近しい人を亡くされたばかり。
彼はお客さん一人一人に一輪の花を手渡し、肖像画を描かれるために椅子に座った。

僕はスティルライフの曲を中心に、即興を混ぜながら肖像画が出来上がるまで一時間弾き通した。
そこには一つの物語があった。
スティルライフの曲たちも、ライブ演奏の中で生まれ変わっていく。この長い期間、部屋で生まれた曲たちが、玄関を開けて外に出ていく。
普段はライブ中に即興で作曲するのがこれまでのスタイルだったので、不思議な感覚。

アクシデントがあり、ライブ直前での到着となり、場所も坂上さんも初めての出会いで、悠さんの演出も直前で舞台袖で口頭で聞いての演奏となったが、それも楽しかった。
上手く作用したのだろう。

明日は名古屋へ。
スティルライフのジャケットデザインを作りにいく。

 
suzuki takahisa