一月三十日  「水中から顔を出すように」

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ミュート・ピアノで録音した曲たちを麻のオリジナル・ミュート・ピアノで新たに録音していく。
まずは響きが聴ければそれで良い。ザクザクと、次から次へ録音していく。
元々のミュートの音が似合う曲もあれば、麻の新しい音が似合う曲もあり、それは予想とは違ったりする。
弾いて、聴いてみなければわからない。

ミュートの状態では海の中にいるような音だった曲が、麻で生まれ変わることもある。水中から顔を出した時のような、新鮮な空気と共に開かれる音だ。
ミュートのままで良い曲もある。それらは麻を拒否する。
レコードノイズが聴こえてきそうな温もりのある音。

お互いがお互いを尊重し合い、引き立て合った時に、このアルバムに「バランス」が生まれるのだろう。
バランスを作る麻に生まれ変わる曲たち。それは果たして、どの曲なのか?
曲順にも大きく影響する。
きっと、この工程はアルバム制作の鍵となる。

いよいよスティルライフという絵に、色彩が少しずつ塗られてきたように思う。

photo TKC

 
suzuki takahisa